レタス

         
 我が国のレタスの生産量は、約50万トン、このうち、静岡県では約2万トンを生産し、粗生産額は約46億円で、全国第5位である。
 日本のレタスの3分のlを生産している長野県は、夏の冷涼な気候を利用して、夏秋の生産が大部分を占めるが、静岡県は冬温暖な気候を利用した冬取りレタスの栽培が盛んである。静岡県でのレタス栽培は、秋から冬にかけて、主に、水田を利用してビニールトンネルで作られている。
 レタスは、食生活の洋風化に伴って、日本人にも親しまれるようになり、昭和38年(1963年)から農林水産省の統計にも載るようになった。当時の生産量は、3万トン弱であったが、昭和50年(1975 年) には26万トン、昭和60年(1985 年) には46万トンと年々大きく伸びてきた。しかしながら、昭和60年代以降、ほぼ、行き渡ったためか、おおよそ50万トン前後で横這いの状態が続いている。 年間、一人あたりの消費量(全国平均)は、おおよそ3.9Kg である。l個の重さは
400 g程度だから、l年問で一人おおよそ10個は食ぺていることになる。静岡県は、レタスの産地であるが、県民一人あたりの消費量は、約2.8Kg であり、年問7個程度と、全国平均に比ぺ、3個程度少ない
 レタスには、老化を防ぐビタミンEや鉄分が多く、古くから、貧血、壊血病に効き、清血や神経の強壮効果もあるとされてきた。神経を鎮める働きがあるので、不眠症の人や何かにつけてイライラしやすい人は、バリバリ食ぺたらよい。本県は、交通事故ワーストlの県である。レタスを食べて気を落ち着かせ、おいしいお茶を飲んで眠気を防げば、交通事故も減るのではないだろうか。
 レタスに含まれるビタミンEは、脂肪酸の酸化を防ぐので、肉食にはピッタリだ。焼肉をレタスにくるんで食べたり、マックのハンバーガーにはトマトやチーズとともにレ夕スがはさんであるのは理にかなっている。
 静岡県のレタスの産地は、志太榛原から西部にかけての地域だ。なかでも、大井川町から、島田市、小笠町、浜岡町、森町にかけては、今の時期、どこでもレタスの栽培がみられる。車でお出かけのときは、畑や田んぼにどんな作物が栽培されているか注意して観察するのもおもしろい。
 レタスは、95%以上が水分で、みずみずしさとパリッとした歯触りが売り物だ。収穫してから、消費者の口に入るまで、いかに鮮度を保つかがレタスの普及の鍵であった。野菜は収穫後も生きているので、呼吸をしている。呼吸によって出る熱が野菜の品質を落とす大きな原因である。呼吸量は気温が上がると高くなり、気温が低ければ抑えられる。特に、夏は、気温が高く、品質の低下が著しい。野菜を冷却して、輸送する技術の発達により、いつでも、どこでもレタスが食べられるようになった。
 レタスの冷却は、真空予冷によって行われる。水は気化するとき熱を奪う。野菜を大型の耐圧倉庫に入れ、倉庫の中の空気を抜くと、野菜に含まれている水分が蒸発し、野菜から熱を奪うので、温度が下がる。葉もの野菜など表面積の大きい野菜には効果的な冷却法だ。
 夏、レタスが食べられるのも、真空予冷したレタスを、冷蔵車で運ぶ体系が整ったおかげである。本県でも、森町、浜松市、菊川町、吉田町、島田市等、主な産地には真空予冷の施設が整備されている。真空予冷の技術は、レタスばかりでなく、イチゴ、スイートコーン、セルリー、中国野菜などでも、新鮮さを長持ちさせる効果がある。野菜の鮮度を保つ技術は、農家の収益性を上げるばかりでなく、消費者にも大きなメリットがある。
 スーパーで売られているレタスは、セロハンのようなフィルムで包んである。レタスは、外側の葉がしおれても、中は新鮮に保たれる。つまり、外側の葉がしおれ、これが中を包んで、みずみずしさを保っている。フィルムは、外側に着いている葉の替わりをするもので、水分やガスの透過を適度に調節する働きをもつた特別なフィルムである。このフィルムが開発されたことで、レタスの外側に付いている葉も新鮮さを保ったまま消費者まで届けることができるようになり、1枚の葉も無駄なく利用できるようになった。
 さて、レタスLettuce の語源は、ラテン語のLactuca である。Lactuca のLac は、乳を意味している。レタスを根元で切ると、切り口から白い液がにじみ出ることから、レタスとよばれるようになった。また、レタスは、日本名をチシャという。チシャはチサ(萵苣)が変化した言葉で、乳草から出たものであるといわれている。洋の東酉で語源が同じであることは、おもしろい。
 レタスの原産地は、野生種が、アジア西部からヨーロッパ、アフリカ北部の広い地域に分布しているので、はっきりしたことはわからないが、現在のトルコを中心とした中近東地域であるとされている。
 地中沿岸地域では、古くから栽培され、紀元前6世紀のぺルシャに記録がみられ、ギリシャ時代、ローマ時代には、一般にも普及していた。この頃のレタスは、現在のように玉になる種類ではなく、結球しないタイプのものであった。
 我が国にも、結球しないタイプが、奈良時代にはすでに中国から伝わり、栽培されていた。チシャは、奈良、平安時代から主要な作物であり、広く普及していた。当時のチシャは、長く伸びた茎に丸細い葉が付き、大きくなつた葉を掻き取って利用するもので、現在の結球タイプのレタスとは外見もも全く異なるものであった。このようなチシャは、昭和の初期間では、全国各地で栽培されていたと記録にあるが、現在ではみることができない。
 結球タイプのレタスが我が国に入ってきたのは、明治維新の6年前の1862年である。レタスは、大変古くからの野菜であり、また、大変新しい野菜である。
 レタスは、玉の巻きがあまり堅くもなくゆるくもないものがよく、切り口の白いのが新鮮だ。重いレタスは、収穫の適期をすぎているものが多いので要注意。切り口を指で軽く押し、弾力のあるものを選ぶようにしよう。
 現在、スーパーなどで売っているレタスの仲間には、結球タイプのいわゆるレタスの他、サニーレタスといわれる葉が柔らかく縮れているタイプもある。サラダ菜もレタスの仲間だ。レタスは生でサラダにして食べるのが一般的であるが、ビタミンEや鉄分が豊富なレタスはたくさん食べたいものだ。軽く湯通ししたレタスに、オイスターソースをベースにしたソースをかけたり、薄切りしたニンニクとともにオリーブオイルで軽く炒めると、簡単でおいしいレタス料理ができ、サラダよりもたくさん食べられる。レタス料理は、あまり手をかけないで、素材のおいしさをそのまま味わうようにしたようがいい。この冬、自分なりの暖かいレタス料理を創り出してみたらどうだろう。
(農の風景23号1991年11月)