祭りの準備風景
(あるいはタスキ持ちの凧前)


 祭をおこなうにはそれなりの準備というやつがある。何も5月3日になって凧を持ち出すわけではない。

 たいてい3月ごろから、早い町では年が明けると凧の準備の話が持ち上がる。
「立ち上がりのスケジュールは」
「今年の初子の人数は」
「何帖の凧を作るのか」
「糸は足りているか」
「接待のいただける所は」
「屋台のお囃子をやってくれる子供は」
とまあ、町の凧揚会の役員は2ヶ月前からお祭りのようなものである。
その中から、準備段階のいくつかの仕事をご紹介しよう。

一 会所開き


 四月の上旬になると、町の集会所(公会堂)に「○○組凧揚会所」の看板が揚がり、組の提灯に今年初めて火が灯る。
 この日、住民が今年の凧も無事に行われる事を願い、町の結束を高めるための食事会(飲み会?)を兼ねた打ち合わせが行われる。それが会所開きである。
 今年度の組長の正式なお披露目のほか、主要な仕事はこの日に決定されるのである。
 組長は町内の人間から選ばれ、まつり本部(かつての統監部)に届け出される。
 しかし、ここ数年の浜松の市街地再開発に伴う人口減少により、古くからの祭の参加町の中には組長を選出するだけでも大変な生みの苦しみをするところもある。
 凧揚祭存続に関する大問題なのだが、祭本部をさらに上のほうで統括する浜松市はそんなことには知らん顔を決め込んでいるため、この問題についての解決への道は遠い

一 凧の補修


 どの町も凧は毎年何枚か新調するが、古い凧も決して捨てているわけではない。
 初凧ではない、町(組)の持つ凧を「町内凧」「組凧」というが、その中には2年・3年、なかには5年選手の凧だってある。古いということはそれだけ骨の重量のバランスがよく、合戦にも負けない凧である証拠なのだ。
 東田町では初凧の糸目付けに先立って、破れ目のある古い凧や、骨の折れた凧を補修する。
具体的には
・破れ……骨に貼りついた古い紙を全て削り取り、新しい美濃紙を糊で貼りつけて蝋で図柄を書き込む。
     そして専用の塗料で図柄を補修。
・骨………虫に食われた大骨はすべて取り除き、新しい骨を添える。折れた小骨は副え骨を当てる。
     東田町では麻糸を裂いた細い糸で副え骨を巻きつける(当日の現場ではエナメル線、通称「アカ」で補修する)。
 かくして老兵に新たな命が吹き込まれるのだ。

一 糸目付け


 糸のバランスが悪いと当然揚がる凧も揚がらない。糸を結ぶ場所(糸目)を決めるのは、まさに神聖な行事なのだ。
まして初凧の糸目ともなると、なおさらおろそかには出来ない。
おおまかな手順は
  1. 突っ張りを合わせる(張りがおかしいと、凧が風に乗らない)。
  2. 三ツ糸を通す。三ツ糸とは凧の上端二箇所と下の中心に通される糸のことで、親糸とも言う。(特に初凧の場合、三ツ糸の穴をあけるのは凧のお施主さんの仕事であり、熟練の組員といえども勝手に千枚通しを通すわけにはいかない)。
     三ツ糸は「垣根結び」である。名前のとおり庭師さんの結び方で、昔ながらの職人技が凧人に受け継がれていることを実感する技である。
  3. 小糸を結びつける。
  4. 三つ糸のバランスを決め、糸を合わせる。
  5. 合わせた糸を2つに分け、さらしを掛けて綱による。

糸目は各町により秘密が多く、なかなか他町も教えてくれない。
当然ウチもこれ以上余分なことは言えない……
糸目付け三ツ糸の重心を決めているところ。
この糸目が凧の揚がり方を決めてしまう、緊張のとき。

一 初凧納め


 糸目付けの終わった初凧は、初子さんの家にお引渡しをする際に「納めの儀」を行う。
 施主家に結納の儀式よろしく凧を納めていただき、町と施主家の幾久しきお付き合いを願うための儀式であると考えていただければよい。
 こんなところから、町の結束は更に高まっているのかもしれない。
初凧納めが済み、糸目のついた凧を背景に喜びのお施主さん一家。
お施主さんのためにも、気合を入れて凧を揚げたいものである。
凧納めの後



もうちょっと、準備期間を見てみたい。       もう待ちきれない、祭り当日へGo!

元の所へ戻りたい。