第三章  誇り

        - D A R K F O R C E S -   

  By.Hikaru Inoue 


V



  カシャッ、カシャッ……。

「フフッ……、これだけの数がいれば、どんな化物が出てこようが負けはしないさ」
 百、二百、いやそれ以上の鎧の騎士の一団が、白昼、その重厚な甲冑の軋む音を響かせながら、カリアの村へと迫っていた。

 ……村一つを殲滅させるには、それはあまりに大規模なものだった。

「貴様等、それでも栄光ある南フォーリアの騎士かッ!!」
 その騎士団の行く手を阻むように村の入り口に立ちはだかったのは、あの黒髪の美剣士リカディだった。
 リカディは、騎士団全軍を叱咤する勢いで、そう大声を張り上げたのだ!
「……これはこれは、第八王女のリカディ殿下ではありませんか」
 一人の騎士がそのリカディに向かっていやらしそうにそう言った。
 ……突如としてその姿を現わした謎の騎士集団に、カリア村の村人たちは騒めきたつ。
「なんだ、あいつらは……」
「家に入りなさい、さっ、早く!」

 リカディは次第に慌ただしさを増す村の入り口で盾となり、一歩も退かずに大軍に向かって堂々とこう続ける!!
「貴様等がドーラベルンで誓った騎士の誓いを憶えているのなら、即刻、この愚かな行為を止め、早々に立ち去れぃ!!」

  シャリィーーーーーンッ!

 リカディが腰から細身の剣を抜いて、騎士団に向けて突き出す。
「そう言えば、殿下。殿下は魔王の森に入り、そして生きて戻られたそうではありませんか」
 また別の騎士がリカディを嘲笑するようにそう言った。
「……何が言いたい」
「もしかすると殿下も、漆黒の魔王と通じておられるのではありませんか」
「妾を愚弄するかッ!!」
 リカディはそう言う騎士を勢い良く張り倒すと、眉を顰めて激怒する!
「貴様等に比べれば、魔王の方が幾万倍も高潔であるわッ! 我ら南フォーリアが苛烈王なぞに敗北したのも、これで首肯けようというもの。――国の崩壊は、単に外からの圧力だけではなかったようだな。……内部がこれほどまでに腐っていようとは」
「綺麗事を言うなッ!」
 一人の騎士がそう叫んでリカディに斬り掛かる!

  ザクッ!!!

「ガハッ!!」
 斬り掛かる騎士の背後から、さらに別の騎士が現われ、リカディへと襲いかかるその騎士に対して、肉厚の剣を突き立てた!!
「殿下に対して、無礼であろうがッ!!」
 リカディの言葉が、騎士団から二十名ほどの蒼き騎士の一団を離反させた。
 蒼き鉄仮面のその騎士は屍から両刃剣を抜き去ると、リカディに自らの姓名を名乗り、その剣を己の胸に当て、南フォーリアの騎士の礼法に適った恭順の意を示す。
「殿下、私は第十六鉄騎団長のバーハルトであります。これより我が隊は、殿下の指揮下へ入り、その指示に従います」
「フフッ、まだ南フォーリアの誇りと魂は死に絶えてはいないようだな。バーハルト卿、行くぞッ!」
 リカディの掛け声を合図に、第十六鉄騎団の蒼い鉄仮面の騎士たちが、その十倍を超える敵に対して一斉に抜刀した。





「リカディ殿下に刃を向ける反徒どもめ、貴様等に南フォーリアの騎士の誇りを見せてくれるわッ!!」

 ……ここに、カリア村を巻き込んだ南フォーリアの騎士たちによる壮絶な同士討ちが開始された。

 その数、二十対二百余。

 勝負を始める前に、すでに勝敗は決しているといえた……。


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