マーチ!マーチ!マーチ!



マーチといえば、J・F・スーザがあまりにも有名だが、ひと頃僕も、狂うほどではないにしても、吹奏楽にかなり興味を持ち夢中になった時期がある。CDも数は少ないが、結構集まった。

 事の発端は、僕がまだ小学生だったとき。親父が買ってきた「世界の行進曲」というタイトルの2枚組みLPレコードを聴いたのがそもそものマーチとの出会いだ。

 ある時、学校の文化祭で聴いた《デキシー・ランド》という曲がとても気に入り、家の電子オルガンで何度も繰り返し弾いていたわけだが、なにやら親父もこの曲を気に入ってくれていたらしい。さっそくレコード買ってきたのはいいのだが、残念ながら、肝心の《デキシー・ランド》は入っていなかった。実際、この曲が目的で買ったのかどうかは知らないが、どうやら、それとよく似た曲名の《ラデッキー行進曲》というのが入っていたので、とりあえず買ってきてしまったらしいのだ。
 
 そんなわけで時は流れ、美専時代に移る。専修学校体育大会が毎年7月になると、秋田県立体育館にて開催されていたわけだが、入場行進のとき、そこで使われていたのが、なんと、まぎれもなく前述のレコードに入っていた、《星条旗よ永遠なれ》と、《土官候補生》の一部!! 嬉しいことに、演奏者もまったく同じものだった。・・・いや、間違いない!!
 体育館いっぱいに響き渡る星条旗・・・。アルテックの大型スピーカーからかもし出されるめちゃくちゃライヴな響きのそのサウンドは、部屋ではとても再現し切れやしないが、帰宅後、夜なのでしかたなくヘッドホンかけ音質変えながら、それでも十分迫力のある豪快なサウンドに、夜寝るのも忘れ徹底的に陶酔しきった覚えがある。
 いずれ、このレコードのおかげでマーチの素晴らしさを知ったわけだし、1枚目の、アーサー・フィードラー指揮/ボストン・ポップス管による世界のマーチも、小学生だった時分、安物の携帯プレーヤーでよく鳴らしたものだが、やはり注目すべきはなんと言っても、2枚目の、M・グールド指揮/シンフォニック・バンドのスーザ!!・・・とにかくマトモなオーディオ装置で鳴らしたときの、、これが決定版ともいうべきスマートでカッコよく、勇壮極まりない演奏の素晴らしさ!! このM・グールドの演奏なくして、《星条旗》は語れない、そう僕自身考えているほどだ。

 ただ、スーザの曲の中でも、飛びっきり大好きな《キング・コットン》があるが、欲を言うと、M・グールドの演奏で聴けなかったのがどうにも悔やまれる。おそらく録音されてはいないはず!?

 また、世界のマーチでは、大好きな曲に、タイケ作曲の《旧友》がある。この曲を知ったのは、やはり美専時代。祖父の78回転SP盤レコードで聴いたのがきっかけだった。いっしょに譲り受けた蓄音機でよく鳴らした。
 当然音はよくないし、楽器の数も少なく、小編成で木琴奏でる程度の頼りない演奏ではあったが、反面、なんておもしろい曲だろう、と思った。
 しかるのち、CD買って正式に聴いた。
 そんな《旧友》も、今では何種類かの変わった演奏で聴き比べるのが楽しみのひとつになっているが、なかでも、P・ヨーダー指揮/吹奏楽団の演奏による2枚組みCDが特にお気に入り。これは世界のマーチがたくさん詰まったとりわけ豪華なCDなのだが、なんと、なんと、熱は完全に冷めてしまったものの、ここで、あの《デキシー・ランド》にもめでたくめぐり会え、聴くことができたのだった。
 それはそうと、このCD、オケによるのか、録音のしかたによるのか知らないけれど、それこそエコーのかからないブラスバンド特有の空気とでもいうのだろうか、まるで屋外で収録したかのような、ほかではめったに味わえないドライな響きがたいへん貴重で、これがなんとも言えぬ心地良さを誘う。
 わざとでなく、ミスだとは思うが、《旧友》の最初の出だしの、奏者同士が若干ズレて出てしまう部分があるが、そこがまたいい。
 ほかに、航空自衛隊中央音楽隊のねちっこいまでの躍動感、エリック・バンクス指揮/ロイヤル・エアフォース・セントラル・バンドのゆったり落ち着いた風格のブラスの着実なる刻み、フィリップ・ジョーンズ・ブラス・アンサンブルのスピーディーな爽快感、・・・と、個性もさまざま。

 今いちばん気に入っているCDアルバムで、最近BOOK・OFFで入手した航空自衛隊中央音楽隊の演奏によるスーザ&アメリカン・マーチ集がある。ネットで試聴し、印象がすこぶる良かったので買ったのだが、いやはや案の定、これがまた実に素敵な演奏なのだ。《キング・コットン》ももれなく入っているし、おそらく、先のM・グールドに決して引けをとらない、このオケ特有の躍動感あふれた、とてもいい演奏だと思う。

 マーチではないが、R・R・ベネット作曲の《バンドのためのシンフォニックソング》、なんでもないようなこの曲・・・・・・、もう、どれほど探しあぐねたことか知れない。
 ステレオをはじめて購入したとき、FMラジオから試験的に、しかも途中だけ録ってしまったのが、この曲だ。これを聴くと、あの時のステレオを買ってもらった喜びとか、新しいステレオの状況とかがリアルによみがえってきて、勇気と希望を与えてくれる。この何気なく録ってしまった曲も、消去するなどとんでもなく、いつしか僕にとってかけがえのない大切な曲となってしまう。当然、作曲者も曲名も何もわからないまま無残にも時は過ぎていったのだった。
 そんなこんなで悩み、レコード探しあぐねつつ、ついには、この分野にとても詳しい方にお尋ねするなどして、最近ようやく探し当てることができたのだが、レコードも無駄に何枚か買ってしまったわけだし、とにかく苦しかった。苦しかっただけに、F・フェネル指揮/東京佼成ウィンドオーケストラで演奏者は実際に録ったのとは少しだけ異なるが、全曲聴けたときの喜びは、それはもう、なんとも筆舌に尽くしがたいものだった。

真夏のこのクソ暑いさなか、久しぶりにマーチを聴いて感激し、踊りまくってますます暑くなるばかりだが、ふと、マーチについて書きたくなったので、今回はなるべく興味あるところだけをピックアップし、とにかく書いてみた。(2013・07・28)





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