幻想交響曲



 近頃、クラシックに夢中だ。スーザのマーチなんかもよく聴く。腕振り回し指揮マネすると、実際、健康にもすこぶる良さそうだし、ただ、あまり長々続けるのはどうかと思う。いずれ、このベルリオーズ作曲の《幻想交響曲》についてもとにかく書きたかったので、過去の日記とも照らし合わせながら、一応書いてみる。

 僕がこの曲を知ったのは、たしかクラシックに凝り始める少し前だったと思う。もちろんFMラジオからだった。例の第1楽章の、高揚し燃え上がっていく辺りが気に入り、2度目に聴いたとき、演奏者も何もわからないまま第3楽章の途中までだったが、カセットテープにエアチェック。そんなのでもけっこう聴き込めたのだった。

 しばらくして、LPレコードを購入することになる。ベートーヴェンの《運命》と同時に注文し購入したのだが、それは、シャルル・ミュンシュ指揮/ボストン響の1955年の録音で、これぞ「幻」の名盤とも呼ばれたもの。
 でも、どうしてこれを選んだのか? そのとき、ミュンシュの《幻想》がこれほど有名だとはまだ知らなかったわけだし、《運命》のレコードを買うとき、先に買った《田園》の、レコード帯に記された同じRCA 「ゴールドシール1500」シリーズの欄で見つけただけのことだったのかどうか、詳しくはちょっと思い出せない。
 とにかく、先のテープのとはまた全然違って、テンポがめちゃめちゃ速く、スピード感にあふれ颯爽とした演奏。第4楽章以降など、僕なりに、秋田での寒々とした冬の煙突のある異様とも思える懐かしい町並みが目に浮かんでくるし、また、全曲が聴けて、これはこれでさすがに魅力的で凄まじい演奏ではあるのだが、テープにエアチェックした演奏がどうしても気にかかり、クラシック総目録で録音年代とかいろいろ調べ上げるも、なかなか見つからない。FMラジオでは、マゼール、ハイティンク、バーンスタイン、クリュイタンス、と、いろいろ聴いたが、どれも違っていた。
 すると、もしやオーマンディか、クレンペラーか、・・・いや、たぶんオーマンディだろう!? そう思って、オーマンディのを買おうとしたのだが、なぜか買うまでに至らず。今思うと、買わなくて本当によかったと思っている。

 ある時、兄貴のアパートでラジカセを鳴らしていたら、たまたまこの曲が聴こえてきて・・・第1楽章の中間あたりで旋律が変わるところ、あそこで気がついた。他ではめったに味わえない華やかさといい、何よりも、急にテンポを落とす加減は、きっとそう。テープの演奏に間違いない、そう確信した。
 案の定、テープにエアチェックした演奏だったのだが、まずその時のうれしかったこと!! しかも、あれだ、これだ、と買わず、ほとんど一発で探せたのも、またうれしい限り。それはなんと、アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管の演奏だったのだ。
 その後、CD復刻盤を即購入。《幻想》聴くなら、やはりアンセルメだね。

 …とは言いながらも、つい最近だが、先に入手したノリントンの「ベートーヴェン交響曲全集」があまりにも気に入ったので、ロジャー・ノリントン指揮/LCP盤による《幻想》をも購入し、試しに聴いてみた。
 しかしまた、これが、前述の今までミュンシュ/ボストン響とか、アンセルメ盤とか、わりと古い録音でばかり聴いていたせいもあって、そのダイナミックレンジのあまりの広さにビビッてしまった。はじめ、音が小さいので音量を上げ気味にして聴いていると、途中で急にうるさくなったのであわてて音量を下げてしまった。
 また、演奏自体は、結構速いテンポではじまったのでそのまま猛スピードで突っ走るのかと思ったら、意外や意外。第4楽章からのゆっくりとした重たい足取りはどうしたものか!? これはこれでまた素晴らしいのだけれど、ていねいというのか、だいたいノリントンらしくない。
 それだけに、かつてのミュンシュのレコードがいかに凄まじいものだったか、だ。このノリントン盤を聴き、あらためてミュンシュの偉大さを思い知ったしだい。
 それよりいちばん問題だったのが、第5楽章「ワルプルギスの夜の夢」の鐘の音。ミュンシュ並みにそこをもうちょっと大きく響かせて欲しかったなぁ。しかしあまり大きいと、考えようによっては、お寺まがいの良からぬことをイメージさせ、気持ちわるくなるというのはある。やはり聞こえないくらいがちょうどいいのかもしれない。
 そして少し間を置き、ノリントン盤を再び聴いてみた・・・最初に聴いたときは、ちょっとどうかな、と思ったけれど、これ、意外といける。第4楽章以降など、僕なりの懐かしさもちゃんと感じ取れるし、こういうゆったりとしたテンポのほうが案外マトモだったりする。ミュンシュではあまりにも速すぎた。

 ところで最近、「交響曲CD絶対の名盤」という書物をネットで買ったのだが、また、意外だったのが、クラシック界であれほど評判のいいミュンシュ指揮/パリ管の名盤がなぜか載せられていないことだ。逆に、というか、喜ばしいことに、ところどころ乱れよろしくもアンセルメ盤が選ばれていたのには、ちょっとびっくりだった。評論家にも、多かれ少なかれ好みというのがあるらしい。
 先に記したように、《幻想》といえばアンセルメというくらい、これは僕自身もそうとう思い入れの強いお気に入りのCDで、あの華やかさは他ではなかなか味わえないのだと思うし、何せ、《幻想》をはじめてエアチェックして聴き込んだのが、ほかでもなくこの演奏だったのだから。(2015・03・23)





戻る