「死んだら神様か? 吠えれば天才か? 何もしなけりゃ生き仏か!」
筋肉少女帯の曲『モーレツア太郎』の一節だ。
ヒトにはなにかしらの冠が付くものである。
何故か毎年あらわれる「10年に一人の天才ピッチャー」。
40過ぎてるのに「若手議員」。
ハレンチ学園でもないのに「ハレンチ教師」。
そんな冠言葉の中でもっとも多く目にするのが、「美人××」であろう。
ここはひとつ、俳優・山城新伍のつもりで「びじんチョメチョメ」と発音していただきたい。
たとえば十人並みの顔でも「美人女将」。もうこれは冠と言うより枕詞となってしまっている。
若くても60過ぎてても全部「美人女将」。そりゃ公平でよろしいですな。
または殺害されれば「美人OL」。この「OL」の部分にはほかにも
保母、看護婦、スチュワーデスなど様々な女性に多い職業の名称があてはまる。実際にはそれぞれ
保育士、看護師、フライトアテンダント(客室乗務員)というべきところだ。
もっとひどいと「美人スッチー」。田中康夫か。
こういう言い回しはどこから来たのかと考えると、「東電美人OL殺害事件」あたりからだろうか。
「美人××」にもそれなりの歴史があるのだ。ちなみにこのOLさんもそれなりの容貌であったようである。
また、犯人が女性の時も「美人美容師の驚くべき凶行」という感じで使われたりもするが、
やはり女性同士の事件は「美人を妬んだ醜女の犯行」ということにしておきたいのだろう、
犯人が余程の美人でないと明記されることはない。
さらに一部の週刊誌に至っては「美人現役女子大生フーゾク嬢」。長い。
もちろん掲載写真は、なんか仮面舞踏会って感じで羽の付いた変なメガネで隠されて
顔なんかわからない。でも、こういうのはガッカリするというよりもむしろ、
「見出しにつられて記事を目にしてしまった」時点で負けを認めるべきであろう。
この見出しの構図は次のように考えられる。
まず「美人」という言葉に反応してしまう、男性大数の哀しい性が、そこにはある。
居酒屋で「とりあえず生!」と告げてしまうのと同じく、
記事の見出しにはとりあえず「美人」という言葉が付けられるのだ。
次に「現役」。「いま、まさに!」というライブ感、臨場感がここで喚起される。
そして「女子大生」。「オールナイトフジ」を経験している読者層は、
いまだに女子大生ブームを引きずっているため、この言葉に弱い、らしい。
(オールナイトフジは、素人女子大生を集めてイジるという面白くも何ともない深夜番組であった)
さらに「フーゾク嬢」。カタカナ表記であることに注意。これが漢字表記だと柳田国男である。
このカタカナ表記の「フーゾク」こそが殿方のイマジネーションを加速させ、
記事は「大1枚小3枚で貴殿もマン足」で締めくくられる。
なんと見事なレポート記事なのだろう。
おかげさまで風俗店には行った試しがない。