クリ→輪廻転生 (りんねてんせい)
わたしはかつて、世界中を飛び回るビジネスマンだった。
スーツを着込みノートパソコン片手に、ヨーロッパやらアジアやら、とにかく様々な国で
いくつもの商談をまとめ上げた。わたしは年齢からすれば不釣り合いなほどの地位と収入を会社から
与えられ、いい気になっていた。
ある日のことだ。数カ月ぶりに家へ帰ると暗い部屋の中、妻と娘がうつむいて涙を流していた。
もうこんな生活はいやだ、と。
わたし自身は何も贅沢せず、家に残した二人のために激務をこなして金を稼ぎ
家族に貢献していたつもりだった。
つもり、だった。
わたしは今まで犠牲にしてきた時間の膨大さを思った。
わたしたち家族に必要なのは金ではなく、共に過ごす時間なのだ、と。
あれからどれだけの時間が過ぎただろうか。
相変わらず、わたしは世界中を飛び回っている。
だが昔と違うのは、そばに家族がいることだ。
わたしがかつて訪れた国、また見たこともないような国、
いろいろなところで家族の時間を満喫している。
食事は小魚や木の実など至って質素だが、
家族揃ってゆっくり味わうのは、何事にも代え難い至福の時だ。
しかしここにもそろそろ冬が訪れる。
そうなれば家族を連れて暖かい国へ飛ぶのだ。
渡り鳥としての人生を歩み始めたわたしたち。
とても、幸せだ。