おむすびは、不思議な食べ物だ。
普段の食事では、ご飯など茶碗一杯喰うのがせいぜいなのに、
おむすびになると二個も三個も平らげてしまう。
ご飯に具を詰めてにぎり、のりを巻いただけの食べ物がどうしてあんなにうまいのだろうか。
今回はぼくが見つけた、おむすびの旨い店を紹介しよう。
まずは静鉄古庄駅近く、「おだまき米店」。
以前、古庄自動車学校で教習を受けていたときに、足しげく通った店だ。
本業が米屋なので当然と言えば当然だが、コメの一粒一粒が白く光っていた。
良いコメを使っているだけでなく、炊き方にも相当気を遣っているのだろう。
口に含むと、米粒がほぐれていって、噛むほどにコメの甘味が出る。
おかか、昆布、梅など、どのおむすびも旨かったが、おすすめは焼きたらこだ。
程良く焦がされ、きれいな肌色になったたらこ。その塩気と海の香りがコメの味を
さらに引き立てて、絶品である。
つぎは静岡市いろは町の某和菓子店。店名は失念してしまったが、饅頭の有名店だという。
たまたま近所で仕事をしていて昼になり、なにか弁当屋はないかとたまたま立ち寄ったのだが、
ここではたくさんの饅頭やおはぎが並んでいて、でも少数のおむすび達もちゃんと
存在を主張していてうれしかった。
ここでは、昆布・おかか・鳥飯を購入。一番印象に残ったのは鳥飯だ。
鳥だしとしょうゆで炊き込まれたそのおむすびは、鳥の脂を身にまとって輝いていた。
味も、鳥の甘い風味としょうゆの香ばしさを十分に吸っていて、旨かった。
ついでに買った薄皮饅頭も、茶色の皮に少し塩気があって、それが絶妙なバランスで
餡の甘味を強める効果を働かせていて、旨い。
いろは町の街道に面した寿司屋の裏手にあるので、ぜひ探して行っていただきたい。
三軒目は静岡市中田の「梅の家」である。弁当チェーン店「のぼる梅の家」とは
無関係なので注意していただきたい。ユニクロ大浜街道店のすぐ南、赤い看板が
目印の店だ。
ここも本業は和菓子店のようだが、店内にはおむすびやおはぎが並んだ
ガラスケースがしつらえてあり、その脇ではおでん鍋がもくもくと蒸気を放っていて、
たまらなく食欲をそそる。テーブル席も用意されているので、一杯やりながら
おでんをつつくというように、イート・インも可能だ。
この店に入ったときには、すでにあらかたのおむすびは売り切れていて、
残っていた昆布・おかか・かんぴょう巻き・稲荷をまず購入した。
そのあと、ぐつぐつと煮立ったおでん鍋に向かい、真っ黒のつゆに
泳いでいた玉子とじゃがいもの串を選んだ。
店は腰の曲がった老女が切り盛りしており、丁寧におでん粉を
ふりかけてくれたのが好印象だった。
味のほうだが、昆布の塩味が非常に強い。
だがその塩辛さが、ごはんに合わさってとてもうまいのである。
よくよく味わうと、その昆布の佃煮はシソの香を十分に含み、甘味もしっかりしている。
ただいたずらに辛かったり甘かったりする市販の昆布佃煮とはまるで違うものであった。
きっと、ごはんに包まれることを計算し尽くして、味を含ませた昆布なのだろう。
おでんもいわゆる静岡おでんであるが、つゆの色ほど濃い味ではなく、
牛スジなどのだしが効いていて、おいしい。青のりといわしの削り粉でつくられた
静岡名物「おでん粉」も非常にマッチして、その味わいを深めていた。
以上、どれも小さな店ばかりだが、近くへ立ち寄った際にはぜひ探して味わってみて
いただきたい。コンビニのおにぎりと見た目はちかくとも、まったく次元の違う味を
知ることができるだろう。
そこには大量生産の味とも、母の味とも違う、プロのおむすびが待っているはずだ。