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あまり園芸書などを見たこともない人は、どんなタネでも、庭を適当に耕し、 土にすじをつけて、そこにぱらぱらとタネを落とし、適当に土をかぶせて終わり というワンパタ ーンをやりがちです。確かにホームセンターなどで売られてい る安価な絵袋入りのタネの半分くらいは、このやり方でも一応発芽しますが、細かいタネや、 鉢植え用などの高価なタネなどは、全く発芽しないこともあります。一口にハー ブ・草花といっても、植物学的には、動物の人 間と魚くらいの差がある物もあ るわけですから、一筋縄というわけには行きませ ん。ハーブと草花のデータの ところに個々の植物についての説明をしておきましたが、種まきについての基本 的なことについてここで述べようと思います。
タネの播き 時 タネをまくとき一番大切なことは、播く時期です。種子にはそれぞれ発芽適温 や生育適期があり、その範囲内にあるときに播かないと、他のことにどんなに気 を使ってもうまく生えません。また生えることは生えても、花が咲かないうちに 枯れてしまったり、貧弱な花しか咲かないなど期待通りの結果が得られないこともあ ります。大きく次の4つの、播き時がありますが、同じ播き時といっても個々に 違いがありますので、詳しくはそれぞれの植物の項目を参照してください。
さらに、ローゼルというハーブなどは、発芽適温が非常に高い上に、開花・ 結実まで半年近くかかり、八丈島や南西諸島などを除くと、温室の設備がない限 り、路地植えで開花させるのは無理なようです。この植物は、若葉を食用にでき ますが、主目的は花の後に発達する萼を飲食に使う訳なので、せっかく種を買っ ても目的は達せられないことになります。このように自分の土地に合わない作物 もあるので、種を買う前によく調べなくてはなりません。その点通信販売は調べ る時間があるのでいいのですが、町に出て買う場合は、そうもできないのが難点 です。
草花・ハーブや観賞用樹木の種まき時期は@取り播き A春播き B秋まき
が基本で、特殊な物としてハボタンとプリムラの仲間の夏播きがあります。勿論
温室の設備がある場合は、かなりの種が随時タネをまけます。
@取り蒔き 晩秋に採集したタネをそのまままく方法です。松柏類・バラ・ツバキなど、樹木のタネの大半はこの方がよ
く 生えます。またキンポウゲ科やセリ科の一部なども取り蒔きの方がいいよう
です 。これらは土の中でいったん寒さに遭わないと発芽しません。また何年か
経っ て忘れた頃に生えてくることもあります。これは植物側の一種の自衛手段
で、せ っかく生えても洪水などで流された時を想定してそのような生え方をす
るといわ れています。
盆栽用の樹種などは、年内に売り出されるので、12月に鉢などに播き、屋
外の凍らない程度の寒いところにおいておきます。この手の植物は発芽率が非常
に悪いですが、4,5月ころになって松や杉のかわいい芽が出てきたときの感動
は何とも言えません。
コーヒーノキやアラウカリア(ナンヨウスギ科)など、熱帯産の樹木にも、タネの寿命が短いものがあります。英国のチルタンというタネの会社は、4千種以上のタネを販売し、樹木や多肉植物などのタネの品ぞろいの多いことでも有名ですが、冷蔵設備などの管理が行き届いているようで、2月はじめに入手したタネは、発芽適温でなかったためになかなか生えませんでしたが、7月になって見事に発芽しました(タネの袋の中に、『すぐ処理するように』と言う紙片が入っていました)。
A春巻き 本来の一年草である朝顔・ヒマワリ・クジャクソウなどや多年草のほとんどが
春播き用です。コスモスやクジャクソウ・金蓮花などのように発芽適温が15渡
くらいのものは、榛南地区では春の彼岸頃に播くことができますが、朝顔やサ
ル ビアなどは5月に入ってから播きます。春播き草花で一番高温が必要なのは
ホウ センカの仲間のインパティエンスで、発芽適温が25度なので、5月中旬
に播き ます。
B秋まき 秋まき草花は一般に寒さに強いが暑さには弱い傾向があります。
概して遅く(彼岸をすぎてから)播いた方がよく発芽しますが、春に立派な株に
して咲かせたい物や、 パンジーや四季咲き性の撫子などのように、冬のうちか
ら花を楽しみたいものは なるべく早く播きます。しかしパンジーなどは現在で
は8月中下旬に播きますが 、 15度くらいでないと発芽しないので、冷蔵庫
に1ヶ月くらい保存してから 播きます。一般的な草花では秋の彼岸頃がよく発
芽します。スイートピーやデルフィニウムなどは十月中旬になってから播きます
。
なお、秋まき草花やハーブの大部分には、タネの袋などに春にも蒔けるよう に書かれています。これは冬の間厳しい寒さや豪雪などに見舞われる東北・北海 道・北陸地方などでは、これらの植物は春に播かないとよく育たないからです。 中部地方の山岳地帯(山梨・長野・岐阜)などでも冬に氷点下10℃以下に下が るようなところでは、加温設備がないと秋まきは無理なところがあります。
アメリカの園芸参考書に、合衆国とカナダを気候別に11のゾーンに分け、
解説をしたものがありましたが、平坦地が続き、気候の変化に乏しいアメリカと
比べ、日本では標高差や、それ以上にその土地土地の気候差があり、同じ村なの
に隣の部落では楽々できる作物が、こちら側では全くできないなどといったこと
もよくあるので、気象がらみの解説は日本ではなかなか難しいようです。
C特別な物として夏蒔きがあります。葉牡丹は7月末から8月始めに播きま
す。またプリムラの仲間は5月に取り蒔きにするか、新しいタネを6月にまきま
す。春先に高級鉢物として出回るシネラリアやカルセオラリアも8月が播き時
で す。秋になってから播くと立派な花が咲かないからです。しかしこれらの植
物は 暑さに非常に弱いので、一般の人には栽培は難しいかもしれません。
また、最近11月から入梅の頃まで長期間に渡って花が楽しめるために人気
がある、パンジーやヴィオラは、早く咲かせるために7月下旬に播きます。しか
し一般に人が暖地の真夏にこれらの草花を管理するのはまず無理なので、7月
に 種子を入手したら、冷蔵庫に保管しておき、8月末に病原菌の心配のない土
で鉢 に播き、彼岸をすぎてから定植するようにすれば、11月末には咲き始め
、半年 近く楽しめます。
発芽適温について 最近種子の袋などにおおよその目安としての発芽適温が書かれています。この
温度は一日の平均気温を表す物で、理科年表などで調べることができますが、だ
いたい春は一日の最高気温がその領域に入ったとき、秋は最低気温がその領域
に入ったときに播き始めればいいと言われています。平均するとソメイヨシノが
満開になるのは最低気温が6度、最高気温が17度。一日の平均気温が12度
く らいです。発芽適温が15〜20度のコスモスやマリーゴールドはこのころ
から屋 外で蒔けます。日当たりのいい窓辺などで鉢に種を蒔ける人は、その1
ヶ月くらい前から播けます。ただ、桜が咲いた後でも霜が降りることがあり、テ
レビの 天気予報で「霜注意報」が出たときは屋内に取り込んだ方が無難です。
春播きの植物は一般に寒さには弱いからです。畑に直播きするときは、少し遅め
に播いた方がいいかもしれません。
細かいタ
ネをまくには、植物の中にはベゴニアやペチュニアのように、1cで数千粒もある物がありま
す。これらは種皮も薄く、指でつまむとつぶれてしまうほどデリケートなもので
す。また細かいタネは好光性といって、ある程度の光がないと発芽しません。
まず浅鉢を用意します。園芸店やホームセンターで、1個百円くらいで売ら
れている素焼きの6寸が扱いやすいと思います。植木鉢は、底に排水用の穴があ
るので、網など(15×30pのものが5枚 で150くらいで売られていますので、
これをはさみで適当な大きさに切ります )で底をふさいだ後、下には赤玉土な
ど少し大きめの土を入れ、その上に市販の 培養土を敷き詰めます。さらにその
上に細かなバー三キュライトやピートなどを入れて平ら にならします。土は市
販品の新しい物を用います。一度使った物や庭の土は病原 菌や虫の卵などが入
っているので使ってはいけません。最近ご親切に「種まき用 土」というのがあ
りますが、粒が細かすぎ、下から上までこれを使うと、水はけが悪くなり、根腐
れを起こすことがあります。下に粒の大きい培養土を入れ、タネが接する部分に
だけ 「種まき用」を使います。
植物が生育するためには、日光・水・空気と肥料が必要なことはご存じだと 思いますが、種の発芽には肥料は必要ないし、むしろ強い肥料は発芽を抑制しま す。そのためにタネが接する1〜2cmくらいの部分は肥料汚す区内か全くない、 種まき用土や、ヴァーミキュライトがよいわけです。
鉢の準備ができたらいよいよ種まきです。古いはがき(雑誌などに付いてい
る資料請求用の物でもよい)を用意して二つ折りにします。はがきの底へタネの
袋から静かにタネをあけます。タネの入ったはがき を静かに鉢の上に持って行
き、折り目の下を左手の人差し指などでトントンと慎重にたたいて、タネが少し
づつ鉢の上に落ちるようにして、タネが平均して重ならないように播きます。そ
の後鉢の大きさにあった受け皿(園芸店で7寸のもの が1枚百円くらいで売ら
れています)に水を張って鉢の下にあてがい、明るい日 陰に置いておきます。
発芽が確認できたら、徐々に日光にならしてやります。
鉢が一杯になるか、本葉が4枚くらい出てきたら、丁寧に抜き取り、2寸5
分か3寸のビニールポットに植え替えます。さらに鉢の中に根が回ってきたら、
花壇や畑に、30pくらいの間隔で定植してやります。
直播きと筋播き
いっぽう、植物の中には、根の造りの関係で、移植を嫌うものがあります。 ダイコンのように直根性といって、長い根が一本地中に入って行くものや、根を 切られてしまうと再生が出来ない性質を持ったものです。豆の仲間やケシ科・セ リ科などにも移植できないものがあります。また、このリストには入っていませ んが、球根植物は植え替えが聴かないものが多いものです。チューリップやヒヤ シンス、グラジオラスなどは植え替えると枯れてしまうので気をつける必要があ ります。これらの植物は直播きといって、花壇や畑の栽培するところに直接播き ます。勿論、本来は移植できる植物でも、タネも沢山あり、手間を掛けて苗を作 る必要のないものは、栽培地に直播きして構いません。
直播きの場合は、播く前に花壇の準備、いわゆる土造りをしておく必要があ ります。土は植物を支えるとともに、植物が必要とする肥料や水を一定の時間保 持しなければならず、また一方、余分な水分は早めに排出しなければなりません 。タネの袋などにほとんど水はけ・水持ちのよい土と書かれていますが、これは 水がすぐに流れてしまわないが、又、いつまでもたまってはいないという意味で す。砂は水はけがよすぎ、一方粘土は水持ちがよすぎて落第と言うことになりま す。一般には団粒構造と行って、小さい粒が集まった適当な大きさの塊が、多い 土がよいといわれ、堆肥や腐植土などが多く混ざった土ほどいいと言われていま す。
また、今まで植物が植わっていた土地は、根の屑やそれに寄生していた病原 菌や害虫が多いため、30pくらい掘り返して上と下の土を入れ替え、それに市 販の堆肥や腐葉土を混ぜて耕します。またキクやツツジなどの昔から日本で作ら れていた植物以外の、欧米から入ってきたものは、ややアルカリ性の土壌を好む 傾向があるので、耕すときの石灰を一坪当たり200cくらい混ぜてやります。 土が酸性かアルカリ性かは、本来はそれを計るメーターが必要ですが、杉菜やド クダミなどの在来の雑草がよく生えている土地なら酸性、セイタカアワダチソウ やブタクサなど帰化植物の雑草がよく茂る土地ならアルカリ性だと思っていいよ うです。近年建築などに使うコンクリートからアルカリが出るため、アルカリ性 の土地がかなり増えてきていると言われています。また、関東地方に多い赤土は 酸性土が多く、特に栃木県の鹿沼土などは非常に強い酸性の土です。一方、黒土 はそれほど酸性が強くありません。そのときに窒素・燐酸・カリが同じ割合で入 っている化成肥料も一緒に入れてやるといいでしょう。
直播きでよく用いられるのは筋蒔きです。栽培地に何pかの間隔で筋を作り 、そこにタネをまいて行きます。農家の人などに頼むと、70pくらいの間隔に 畦を作り、まるでダイコン畑みたいに作ってくれますが、花壇はどこからでもの 手が届くように作ってあるので、そんなに広く開ける必要はありません。草本な ら株が張って大きなものでも40pの間隔があれば十分です。むしろ花壇はマス (集団)の美しさを楽しむものですから、隣同士の株がふれあう程度に植えた方 が見栄えがします。
適当な間隔で、移植ゴテなどを使って1pくらいの筋、いわゆる溝を作り、 そこにバラバラとタネを落としてゆきます。播いたあとにタネの上にかける土の ことを覆土(ふくど)といいますが、一般には細かいタネはタネが見え隠れする 程度に薄く、一方、大粒のタネは5oくらいかけてやるのがよいとされています 。しかしこれも植物によって違いがあり、鶏頭などのようにかなり細かいタネな のに、2oくらい覆土しないとよく発芽しないものもあります。タネは発芽する までは多くの水分を必要とするので、発芽までは乾かさないようにします。一般 に発芽適温なら、5日から10日くらいで発芽します。
粒播き(点播き)
大粒のタネをまくときによく行われる方法が粒巻きです。春巻きではヒマワ リアサガオ・キンレンカ・コスモス・ダリアなど、秋まきでは豆類などでよく行 われています。これは最終的に株間となる間隔を置いて、直径5センチくらいの 領域を移植後手などでつけておき、その領域の中にタネを2粒か3粒くらい埋め てゆきます。種が発芽してある程度大きくなったら間引いて一つの領域に1本だ け残るようにします。後で二つとも初がしなかったなどと言うこともあるので、 1点に3〜4具部くらい幕のが本当はいいのですが、そうするとタネが無駄にな る欠点があります。そのため、あまり高価なタネでは使えない手です。
最近気が付くのは、タネが高価になったと言うことです。私が子供の頃、いわゆる昭 和30年代には、タネは一袋10円で買えたのですが、現在は150円が最低で、300円、500円などのタネも少なくありません。。採集や選別などに人件費がかかるからなのでしょう。また、一代交配種が増えたため、タネの袋の値段が高くなった以上に、一袋に入っているタネ の粒数が少なくなりました。その分個性的で立派な花の咲くタネが多くなってきています。昔ならヒマワリと言えば「ロ シア」1種だけでしたが、現在サカタのタネやタキイ種苗のカタログを見ると、 十数種のヒマワリのタネが売られています。色や形がいろいろあるだけでなく、 花壇や鉢植え、さらにプランター上に言いように、矮性に改良されたものや、ま た切り花にしてテーブルや仏壇に飾ったとき、それらを花粉で汚さないように花 粉のほとんどでない品種というのも出てきています。選択肢が増え、便利になり ましたが、その分だけまた園芸についての豊富な知識が要求されるようになって きています。
一方、ガーデニングの流行とともに、趣味の園芸家というより横着な花愛好 家が増えたせいか、最近タネとして販売される品種が少なくなり、1,2年草で もポット苗として販売されることが多くなってきました。確かにパンジーなどは 、一般の人がタネをまいて年内に咲かせることはなかなか難しく(10月下旬に咲 かせるには、7月末には播かなくてはならず、高冷地でもない限り屋外で播くの は難しい)、100円前後の苗を数本買ってきてプランターに植えれば半年も咲 き続けてくれるので、これほど便利な物はありません。しかしパンジーも9月に 播けば素人でも楽に栽培できますし、年内に咲かせるのは無理としても、3月か ら6月まで愉しむことができます。また、春の花は決してスミレだけではありま せん。キンセンカやナノハナ、デージー、ポピー、スイートピーを始め、タネか ら育てられる草花だけで何十種もあります。