最終更新日:2007年7月30日
「セクハラ被害」の更新履歴
2007/7/30 セクハラ被害解決事例と教訓
2007/2/8 セクハラ食堂店主に110万円の賠償命令〜静岡地裁民事2部2係2007年2月7日判決
2007/7/30 セクハラ被害解決事例と教訓
1.1999年に改正男女雇用機会均等法が施行されてから8年が経ちますが、セクハラ被害は後を絶ちません。
2.2007年2月8日にHPに掲載したセクハラ判決以外にも、私は2007年に2件依頼を受けました。
そのうち1件は、職場で上司から業務中に約7年に亘って、セクハラ発言やみだらな行為を強要するなどのセクハラ被害に遭っていました。元上司と会社に対し慰藉料の支払いを求めて静岡地裁に民事提訴後、訴訟上の和解が成立し、慰藉料600万円の支払いを受けました。
そして、もう1件も職場の上司から強制わいせつと強姦未遂の酷い内容の被害を受けた女性の依頼でしたが、上司と交渉した結果、被害女性の要求した慰藉料500万円を全額支払う(但し、長期の分割)との内容で示談しました。後者の場合、民法715条1項の使用者責任が問いにくいケースでしたので、会社は交渉相手としませんでした。
事件発覚後、前者は退職、後者は懲戒解雇となりました。
3.前者の事件で、被害が約7年という長期に亘ったのは、自分は被害者であるのに自ら退職することに抵抗があったこと、転職した場合には大幅な収入減につながること、家庭の事情等があり会社を辞める選択は困難であったこと、上司が役職者だったため仮に会社へ被害を申告しても会社はその上司に厳正な処分を下さないのではないか、そして逆に自分が上司から報復されるのではないかと恐れ、会社には被害を申告できずにいたことが、その理由です。一方で、被害女性が、会社を辞めたり誰かに相談することもなく長期に亘って上司から被害を受け続けていたということが、裁判で被害女性の請求した慰藉料1000万円について裁判官の理解を得る上での“壁”になりました。
4.前者の被害女性は長期に亘って被害を我慢し続け、限界にまで追い詰められて知人に相談し、当事務所を紹介されました。後者の被害女性はこのHPを見て、当事務所に相談に来ました。
セクハラ被害で泣き寝入りすることが次の被害を助長させることに繋がりかねないことは言うまでもなく、前者の裁判でも明らかのように、長期間泣き寝入りし続けると、その後の被害回復でも不利になってしまいます。職場でセクハラ被害に遭った場合は、すぐに公的機関、弁護士などに被害を訴え事態の改善を求めることが重要です。
5.弁護士の仕事として法的結着をつけましたが、トラウマやPTSDを背負うお2人に今後も力になれることがあったら協力を惜しむものではありません。
 
2007/2/8 セクハラ食堂店主に110万円の賠償命令〜静岡地裁民事2部2係2007年2月7日判決
1 事案の概要(判決より引用)
 本件は、被告が店主をしている食堂でパート店員として働いていた原告が、被告から、臀部を触る、揉む、卑猥な言葉を言う、股間を臀部を押し当てる、キスをするような仕草をしたり胸を触るような仕草をする、原告がトイレに入るとドアを開けようとドアをガタガタさせるなどのセクハラあるいはわいせつ行為をされたと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償として550万円(慰藉料500万円,弁護士費用50万円)とこれに対する最終の不法行為日である2006年4月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の各支払いを求めた事案である。

2 裁判所の判断
(1) まず、原告がトイレに入った際、被告がトイレのドアをガタガタと揺さぶったことがあること、2006年4月25日に、被告が、作業をしている原告の背後から原告の尻を両手で持ち上げるようにして触ったこと(原告は「揉んだ」と表現している)については、当事者間に争いがない。
 また、証拠(甲5,甲6の1,甲6の2,甲7,甲8,甲10,甲11,証人3名,原告本人,被告本人)及び弁論の全趣旨によれば、さらに次の事実が認められる。
@ 被告は、週に複数回、原告の臀部を触っていた。
  なお、被告のこのような行為は、原告が不法行為として主張する2005年5月よりも前からあったが、当初、原告はこれを明確に拒絶するような態度は取っていなかった。
A 被告は、原告と2人きりになった際、客席で作業をしていた原告のところに、壁伝いに忍び寄った。原告は「きゃー」と言って逃げた。
B 被告は、原告に対し、「舐めたい」とか「しゃぶれ」などと言った。
C 被告は、複数回、原告に対し、口をすぼめてキスをするような仕草をしたり、胸を触る(あるいは揉む)ような仕草をしたりした。
D 被告は、必要もないのに、作業をしている原告の後ろの狭いスペースに無理矢理身体を入れて、原告の臀部と被告の股間が押しつけられるような状態にした。
E このような中で、原告は、2005年5月ころ、同僚に対し、「親方がしゃぶれとか、なめたいとか言った」などとして、被告のわいせつ行為について相談したことがあった。また、原告は、2006年4月28日にも、前記同僚に対し、被告が、2006年4月25日原告の臀部を揉んだことなどを話した上で、「夫が仕事に行くなと言っている」などと告げた。
(2) 被告の原告に対する上記各行為は、原告の性的自由を侵害するとともに、女性労働者である原告が不快を感じることにより就業を継続する上で看過できない程度の支障を生じさせたものといえるから、セクシャルハラスメントにも該当し、不法行為を構成する。

3 損害の額
(1)慰藉料  100万円 
  上記各不法行為の具体的に内容(態様,期間,頻度など)、これに対する原告の対応、原告が精神的苦痛を感じ2006年5月2日に本件食堂を退職するに至ったこと、原告の従前の収入の状況、不法行為後の被告の態度・態様、その他本件に顕れた一切の事情を考慮し、100万円をもって相当とする。
(2)弁護士費用  10万円

4 原告代理人の評価
(1) 被告は弁護士を立てず本人訴訟を通したが、その主張の要旨は「@Hな冗談やひょうきんな仕草は親方のキャラクターであり、原告も承知の筈。A働いている被告の妻や他の店員は、被告が原告にわいせつ行為をしたことは露ほども思っていない。B06.4.25.頃、原告の臀部に手が触れたのは、稚戯的な親しい仲での行為、茶目っ気から出た行為である」というもので、全く反省のない態度で終始した。
(2) セクハラ行為の期間,頻度,態様の悪質性、被告の応訴態度における反省のなさからすると判決の慰藉料100万円というのは少ないと思います。
  判決理由にある「(セクハラ行為に対する)原告の対応」とは裁判官が原告本人質問の折に「なぜもっと早く食堂をやめなかったのか」と質問したことと、結びついたものではないかと私には気になるところです。これに対する原告の云い分は、「自分は悪くないのに、なぜやめなきゃいけないという想いでギリギリのことろまで働いていた」というものです。又「原告の従前の収入の状況」が慰藉料の算定要素となる考え方もよく分りません。
  判決にご意見・感想のある方は、メールやFAXを当事務所にお寄せ下さい。
(3) 静岡地裁でのセクハラ判決は久し振りではないかと思います。
  セクハラ行為自体は減ってはいないと思いますので、事ある毎に取り上げて、社会に警鐘を鳴らす必要があると思い、取り上げました。
  セクハラに泣き寝入りは無用です。
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