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夢・・・・・

RCカーの楽しさはいろいろある。その人によって、楽しさのポイントや度合いも千差万別だ。ただ、本格的サーキットで

レースに出場するのはRCカーファンの誰もが認める楽しみの一つである。初めて操縦台に立ち、スタートの合図を

待っている時のあの心臓の鼓動は、人間の持つ”純粋”さの証明であろうか。

RCサーキットの規模は、コースの全長・幅・ピットスペース・駐車可能台数などで比較されるが、ここは国内最高水準を

誇る。そのためタミヤ掛川サーキットには、東京や大阪からも大勢の人がやってくる。

このサーキットで開催される各種レースに出場する人は、毎回2〜300人に上る。その内、何人かは練習のため前日入り

をする。しかしほとんどの人は、朝早く(7時頃)サーキットに集合し、レースが終わる(午後5時頃)と帰ってしまう。

掛川市は、地方の一都市としてはかなり頑張っている。生涯学習都市を宣言し、新幹線の駅や東名高速道路のインター

チェンジを作り、掛川城を木造で再建し、城下町風町作りも進んでいる。しかし市民にもう一つ熱気が感じられない。

これらの事はそれぞれが別の方向の話であるが、一つの方向に束ね、大きな成果を生み出す事は出来ないだろうか・・・・・・。

 

真昼の青空に花火が大きな爆音を響かせた。それまで低くリズミカルな音を立てていた20台のマシンが、一斉に唸リ声を

あげて同じ方向に走り出した。わずかな白煙を残し、マシンの一団が1コーナーに飛び込む。12時ジャスト掛川8耐(RCエンジン

カー掛川8時間耐久レース)がスタートした。8時間耐久レースとはいえドライバーの本能からか、先を競って各コーナーに

   マシンがなだれ込んで行く。

 最初に戻ってきたのは、3番手からスタートしたマシンだ。しかしまだ差はなく、

   ほとんど団子状態でストレートを通過していった。これから長い戦いが続き、

  その間何が起こるか誰も知らない。そして勝利は闇の遥か向こうである。

         スタートの一瞬

今や掛川8耐は夏のビックイベントとして全国から大勢の人が集まってくる。6人で編成された各チームのメンバーはもとより、

応援や見物の人達で1年中で最も賑わう時だ。昨日は公式練習と予選があり、夜は前夜祭があった。前夜祭は市内の青年

ボランティアにより運営されている。若者らしいアイデアと歯切れの良さで、華やかに楽しく行われた。参加チームの紹介や

軽妙なトーク、有志によるバンド演奏、そんな中でジーンズにTシャツ姿の市長が挨拶に立ち、ユーモアたっぷりの話にヤンヤの

喝采を浴びた。会場のまわりには屋台が並び、飲み物や軽食が振舞われている。いろいろな所でこの町の人達の、温かい

もてなしの心が伝わってくる。そしてどの顔も輝いて見える。

スタートから4時間、丁度レースの中間点だ。コース上では15台のマシンが周回を重ねている。2台がすでにリタイヤとなり、

3台のマシンがピットで懸命の作業を続けている。エンジンに手を付ける場合は、規定によりオフィシャルが立ち会っている。

ピットクルーの顔にやや疲労が漂っていて、その作業を見守るドライバーも不安の色を隠せない。このサーキットからは見えないが、

すぐ近くに有る広場から笛と太鼓の音が聞こえてきた。

  どうやらこの町に伝わる獅子舞いが始まったらしい。「仁藤の大獅子」とよばれ、ほろ(白と紺の

   布)をたなびかせ、大きな獅子頭を6人の大人でかかえ、作法に従って勇壮に舞う。獅子頭の動き

   に100人ほどの勢子が調子を合わせホロを動かす。見物人はその迫力に圧倒される。

 カメラマニアには絶好の被写体で、後で開催されるフォトコンテストには、必ずこのシーンが

     「仁藤の大獅子」            数多く出品される。

広場の駐車場ではフリーマーケットが開かれていて、隣接のグラウンドでは各地区代表による

8耐サッカー、8耐ソフトがおこなわれている。年齢・性別規定があって女性や高齢の選手も見うけ

られ、それぞれメンバーチェンジをしながら8時間の試合を戦っている。地区の連帯感が年齢の

枠を超えて高まっている様だ。

暑さを避けて公園内の市営プールに行っていた人達が帰ってきた。あちらこちらでバーベキューが始まり、アウトドアライフの

楽しさを満喫している。ただし年配の人達は矢倉を囲んだ盆踊りの方が合うらしく、浴衣に着替えて広場の方向へ歩いて行く。

熱かった太陽も地平線の彼方に沈み、空には星がたくさん見えるようになって、サーキットは照明の中にあった。すでに7時間

以上絶え間無く走り続けてきた各マシンは、ライトを点けて走行をしているが、相当な疲労を抱えていると思われる。ドライバーや

メカニックも汗に光る顔が気のせいか痩せて見える。給油の為にピットに帰って来たマシンに、メカニックが飛びつく。燃料を補給して

いる間にタイヤ交換が行われ、各部のチェックも済ます。秒単位で行われるこれらの作業はメカニックの見せ場だ。ドライバーも最後の

交替を済ませて、マシンはピットロードを加速して行く。

  序盤から安定した走りを見せていたマシンが、やはり上位を占めていて優勝争いは3台に

 絞られた様だ。現在のトップは浜松の「Oチーム」、2位はわずか1周の差で「アメリカ招待チーム」、

  3位に地元掛川の「Eチーム」が続いている。県外からのチームはトラブルを抱え苦戦しているようだ。

  そして最後の最後に大きなドンデン返しが待って いた。なんとトップを走っていたマシンがコース上で

 夜間走行ゴールは午後8時    ストップしている。すぐにピットに運ばれ必死の作業が行われたが、オーバーヒートからかエンジンが

掛からない。ピット前のストレートを2位・3位のマシンが通過して行く。残りはあと2分だ。ここから4ラップに渡り激しいトップ争いが繰り広げ

られた。アメリカチームのすぐ後ろに掛川チームがまさにテール・ツー・ノーズで食いついている。ストレートではややアメリカチーム

が優るが、コーナーでは掛川チームが差を詰める。僅かにあいたインを突こうとするが、なかなか抜く事が出来ない。ファイナルラップの

スプーンコーナー出口で一瞬アメリカチームが膨らみ、2台のマシンはサイド・バイ・サイドの状態で最終コーナーへ突入した。

各チームのメンバーやレーススタッフはもちろん、観客席のほとんどの人達が立ちあがって大歓声が湧き上がった。特にアメリカチームの

声援は、今までレース展開を詳しく放送して盛り上げてきた場内アナウンサーのやや上ずった声をもかき消した。

2台のマシンがストレート中央のゴールラインをほとんど同時に通過した時、夜空に大きな花火が連続して打ち上げられた。何発かの

爆発音が終わって少しの間があり、場内アナウンスで「優勝はアメリカチーム!」と告げられた。

再び、喜びと祝福と達成感に満ちた大歓声が沸き起こった。

                       =おわり=

 


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