◆ 第 1 章

 ネロ・ウルフが死体公示所の内部を目のあたりにしたのは、これが最初で最後のことだった。
 その三月の木曜の晩、ぼくは電話の応対どころではなかった。八時一〇分前に出かけることになっていたし、ウルフは、食べ物をかきこんであたふた出て行くような奴と食卓を囲んだりはしない。だからぼくは、マジソン・スクエア・ガーデンで行なわれるバスケット・ボールの試合のチケットをポケットに、台所で食事をしていた。もっと早めに夕飯を済ませればよかったのだが、この時ばかりは無理だった。フリッツが野生の七面鳥を油でいためて焼き色をつけ、蒸し煮していたからだ。いざ蒸し煮し終わっても、七面鳥を大皿に載せてダイニングルームへ運んで行き、ナイフを入れる前の丸のままをウルフにみせるのがフリッツの流儀だ。ぼくだって、スポーツの試合やショーを見に行く予定のある日は、六時半ごろに冷蔵庫からなんやかや取り出し、ゆっくり食事を済ませることもある。だが、あつあつの七面鳥の魅力には勝てなかった。もちろんフリッツ特製のセロリ・ソースとコーン・フリッターのことは言うまでもないが。
 ちょうどぼくが椅子を引いて立ち上がった時だ。電話が鳴った。出かけるはずの時間から、すでに六分遅れている。台所の内線でとってくれるようにフリッツに頼むと、ぼくは玄関ホールを目指した。コート掛けからトップ・コートをはずして羽織った時、フリッツの大声が聞こえてきた。「アーチー! ステビンズ巡査部長からあんたにだよ!」
 ぼくは不満を表わすにはぴったりだが、本に載せるにはふさわしくない言葉をぶつくさ言うとオフィスへ向かった。自分のデスクまで行くと受話器を取る。「さっさと話してくれ。八秒やるよ」
 実際には八秒の八十倍はかかったと思う。パーリー・ステビンズが話を引きのばしたわけではない。電話の要件を聞いてしまうと、ぼくのほうがそうせずにはいられなかった。受話器を置いたあともウルフのデスクを渋い顔で見つめながら、ぼくはしばらく立ちつくしていた。長年ウルフに事件の報告をしてきた。彼の気には沿うまいと最初から分かっていながら報告しなけりゃならないこともずいぶんあった。が、今回は特別だった。こいつはこたえた。あと二分早く出かけてればよかったな、とさえ思ったが、その後――少なくともウルフにとっては――もっと辛いことだろうと考え、ホールを横切るとダイニング・ルームに入った。
 「電話はパーリー・ステビンズからでした。三十分前、五十四丁目の家から出てきた男性が、車をとめて待ち伏せていた男に撃ち殺されたそうです。身分証明書では――」
 ウルフが遮る。「食事中に仕事の話は禁物だ。また注意なきゃならんのかね?」
 「それにはおよびません。仕事じゃないんです。死体から見つかった身分証明書を見た限りでは、被害者はマルコ・ヴクチッチです。パーリーは間違いないと言ってます。二人の刑事が身元を確認済みですが、一応ぼくにも来て確認してほしいそうなんで、ご異存がなければこれから出かけてきます。夜の過ごし方としては、バスケットの試合に行くほど楽しいってわけにはいきませんがね、でも彼は……」
 喋り続けたかったのだが、のどの通りをよくするために中断しなければならなかった。ウルフは握っていたナイフとフォークを皿の上に静かにそろえた。その眼がこちらをみつめている。だが睨みつけていたわけじゃない。ウルフの口の端は、ピクッしたかと思うとすぐにまた引きつった。痙攣を止めるために、彼は口を堅く結ばなければならなかった。
 ウルフがうなずく。「行きなさい。向こうから電話してくれ」
 「なにかほかに――」
 「いいから行きなさい。電話するんだぞ」
 ぼくは回れ右して、出発した。
 十番街を一ブロック南へ行ったあと、三十四丁目でタクシーを止める。東三十九丁目にある市営の死体公示所まで、さほど時間はかからなかった。ぼくの顔は連中に知られていたし、来ることが分かっていたこともあって、なんの質問も受けずに鉄柵の中に通され、そのまま建物に入った。あそこの匂いはどうも好きになれない。以前フェーバーという検死官助手が、ここの匂いは病院とたいして変わらないという説をぼくに売り込もうとした。だが、ぼくの鼻はよくきくので、そんな説は買わなかった。冷暗室に入れてない死体は、あっても一、二体で、それ以上ってことはめったにないんだから、そう言い張るフェーバーに、そんなら死体公示所らしく臭うようなもんをここんちにスプレーしなきゃならんな、と言い返したものだ。
 廊下を案内してくれた殺人課の刑事は、会釈するていどには知っていたし、連れて行かれた部屋でも、面識がないのは検死官助手だけだった。彼は手伝いの人間を脇に従え、強烈なライトの下の細長い台に横たわる物体に取り組んでいる。刑事とぼくは少しの間その作業を見守った。作業内容の詳しい説明は、なんの役にも立たないと思う。もし読者が、第五と第六ろっ骨間隅に入った弾丸のことで死体を調べる事態に直面するかもしれないというんなら話はべつだが。だから、これ以上の描写は控えることにする。
 「どうかね?」刑事が尋ねた。
 「ああ、ほとけさんは確かにラスターマンの店のオーナー、マルコ・ヴクチッチだ。書類にサインする必要があるんなら、電話してくる間にそろえておいてくれ」
 廊下に出ると、電話のボックスへ行きダイヤルを回した。ぼくが外出しているときはいつも呼び出し音が二、三回したあとでフリッツがでるか、もしくは五、六回したあとでウルフがでるんだが、その時は最初の呼び出し音が鳴り終わらないうちにウルフがでた。
 「もしもし?」
 「アーチーです。確かにマルコでした。胸に二発、腹に一発撃たれてます。ステビンズは五十四丁目の現場にいるんじゃないかと思います。おそらくクレーマー警部も一緒でしょうね。現場に行ってみましょうか?」
 「いや。そこにいてくれ。わたしもこれからマルコを見に行く。そこの住所は?」
 もう二十年以上もマンハッタンで殺人専門の私立探偵として生計を立てているというのに、ウルフは死体公示所がどこにあるのか知らないのだ。ぼくは住所を教えた。だが、この状況では、ちょっとした団結心ってやつも場違いではないと思ったし、ウルフが車での移動をどれほど嫌ってるかも知っているので、ぼくがガレージからセダンを出しに戻って、あなたを乗せてくるっていうのはどうです、と提案しようとした。が、電話は切れてしまった。ぼくはドノバンという名の巡査部長が座っているデスクの前まで行くと、死体は確認したがウルフさんも見に来たいとおっしゃってるんで、ぼくも彼についてまわるから、と申し出た。
 ドノバンは首を振る。「あんたに関する指示しか受けてない」
 「ばか言え。指示なんていらないだろ。ここへ入ってきて、親戚や友達、もしくは敵の死体を見る権利はどんな市民にも、それに納税者にもあるはずだぞ。ウルフさんはここの市民で、そのうえ納税者だ。彼の税金申告はぼくがしてるんだからな」
 「あんたは私立探偵だとばっかり思ってたんだけどな」
 「そういう言い方は好きじゃないね。確かにぼくは私立探偵だ。だが、会計士でもあり、筆記者でもあり、そのうえオナモミ(キク科の雑草)でもあるんだ。十中八九あんたは筆記者なんて言葉は聞いたこともないだろうし、オナモミだって見たことないだろうけどな」
 彼は怒らなかった。「わかったよ。あんたは教養と才能にめぐまれてるってわけだ。だが、どっちにしろネロ・ウルフに関しては指示がいるんだ。あの人のことは知り過ぎるほどよく知ってる。やっこさんのこった、殺人課や地方検事ならうまいこと丸め込むことができるだろうよ。だがな、おれやうちの宿泊客には通用しないんだよ」
 ぼくは言い争う気になれなかった。ドノバンは気苦労が絶えないってことがよく分かっていたからだ。いったんある男にこの死体公示所へ入ることを認めてしまうと、偽の身分証明書を作るための情報を集めようと企むチンピラ二人組から、自分は未亡人になったのかどうかを知りたがってるヒステリー女に至るまで、誰かれ構わず入れてやるはめになるかもしれないのだ。こういう心配がドノバンをいらつかせていたのだと思うし、彼にもそう説明してやった。そのあとぼくは彼に、マルコ・ヴクチッチについて二、三、話して聞かせた。ぼくの知る限りでは、ネロ・ウルフをファーストネームで呼ぶ人間はたった十人しかいなかったが、マルコはそのうちの一人だったってこと。長年にわたって、マルコは月に一度はうちに来てウルフと一緒に夕食をとり、ウルフとぼくも月に一度は彼のレストランで夕食をしてたってこと。それからマルコとウルフは、今はユーゴスラビアの一部になっているモンテネグロで少年時代を共に過ごしたんだってことを。ドノバンはぼくの話を聞いてはいたみたいだが、感銘は受けていなかった。この説明で状況は手にとるように分かったはずだと思い、ぼくが息つぎのために中断すると、ドノバンは電話の方を向いて殺人課を呼び出し、ウルフが来るのだが指示を仰ぎたい、とお伺いをたてた。
 彼は受話器を置いた。「折り返し電話するとさ」
 たいしたことはなかった。許可は、ウルフを招き入れるためにドアを開ける一分前におりたのだから。ぼくは鉄柵に囲まれた門を開けに行き、ウルフを中へ通した。「こっちです」解剖室へ続く廊下を案内する。
 検死官助手の医者は第五と第六ろっ骨間に入った弾を取り出し、少し下のほうにある弾にとりかかっているところだった。ぼくは医者から三歩離れたところで立ち止まると、その様子を見守ることにした。ウルフは身体の中でもっとも出っ張っている部分、つまり腹が、台の端に触るまで近づいた。医者もウルフに気づき話しかけた。
 「あなたのお友達だそうですね、ウルフさん」
 「そうです」いささか大きすぎる声でウルフが答えた。死体の傍らに行くと手をのばし、指先をマルコの顎の下に置いた。開いたままの口を閉じさせようと下顎を押し上げるのだが、手を離すと唇はまた開いてしまう。ウルフは渋い顔をして医者を見た。
 「あとでちゃんとしておきますよ」医者は請け合った。
 ウルフはうなずくと着ていたベストのポケットに指を突っ込んだ。指を引き出したかと思うと、医者に小さなコインを二つ見せる。「古いディナール・コインです。ずいぶん昔に交わした約束を果たしたいんですが」医者がどうぞご自由に、と言うと、ウルフはまたマルコの顔に近づいた。今度はまぶたの上にコインを載せるためだ。死体の頭は少し傾いている。ウルフはコインを安定させるために、マルコの頭をまっすぐ上に向かせなければならなかった。
 ウルフが死体から顔を背けた。「これでいい。彼との約束はすべて果たした。行くぞ、アーチー」
 ウルフのあとについて玄関まで行くと、さっきぼくに付き添っていた刑事が巡査部長と喋っているところだった。そいつはぼくに、陳述書のサインはいらない、と言い、ウルフに、死体は確認したんですか、と聞いた。ウルフは、した、と言ってから尋ねた。
 「クレーマー警部はどこかね?」
 「悪いんですが、お教えできません」
 ウルフはぼくを見た。「タクシ−を待たせてある。マルコの住所は東五十四丁目だったな?」
 「そうです」
 「行ってみよう」彼が歩き出したのでぼくも後に続いた。
 アップ・タウンを飛ばすタクシーの中で、前代未聞のことが起きた。ウルフの機械不信は相当なもので、車輪がついている物での移動中は、たとえぼくの運転であろうとも会話できる状態にない。だが、その時の彼は、そんな自分を押さえていたのだ。ウルフはマルコ・ヴクチッチに関して、ぼくに質問し始めた。彼のほうがマルコとのつき合いが長いんだし、よっぽどよく知ってるんだってことを、ぼくは思い出させてやった。だがウルフは、マルコが彼とは一度も話したことがなくて、ぼくとなら話したかもしれない話題もあるはずだ、と言う――たとえばマルコの女性関係について。それなら理にかなってる、とぼくも認めた。だが、ぼくの知るかぎりでは、マルコは自分の女性関係について他人と議論するような時間の無駄はしなかったはずだし、そんな時間があったら、どんどん女と楽しんだことだろう。そう話してから、ぼくは例を挙げた。二、三年前、ラスターマンの店にスー・ドンデーロという女性を夕食に連れて行ったことがある。マルコは彼女をひと目みるなり、店でいちばん上等のクラレット(ボルドー地方産赤ブドウ酒の通称)を一瓶プレゼントして、翌日ぼくに電話をかけてきた。彼女の住所と電話番号を教えてもらえないか、と言うんで、ぼくはそうしてやり、スーの名をリストから抹消したのだった。なぜだね、とウルフが尋ねる。彼女にチャンスをやったんです、とぼく。マルコはラスターマンの店の単独オーナーで、金持ちのうえにやもめだったんだから、スーは玉の興にも乗れたんですよ。そう言うと、だが乗らなかったじゃないか、とウルフ。そうですね、とぼくも同意した。ぼくの知る限りでは、二人の仲は点火装置になんらかの問題があって燃え上がらなかったのだ。
 「まいったな」タクシーの運転手はそうつぶやくとブレーキをかけた。
 パーク街を五十四丁目へ折れ、レキシントン街にさしかかったところで、警官が車に止まるよう手で合図したのだ。タクシーが止まる時、車体がガクンと揺れたが、これでウルフの機械に対する態度は正当化されたといってもいい。運転手は窓の外へ首を出すと文句を言った。
 「このブロックにある建物に行かなきゃならないんですよ、おまわりさん」
 「だめだ。閉鎖中だよ。別の道を行ってくれ」
 運転手がハンドルをぐいっと引く。車は歩道の縁に乗り上げた。ぼくは料金を払うと車から降りてドアを支えてやる。ウルフが出てきた。彼は少しの間、その場で立ちどまると深呼吸をしたが、それが終わるとぼくらは東へ向かった。通りを十歩行くと、さっきとは別の警官がいた。少し先にもまたひとり。前方、ブロックの中ほどは集会のようにごったがえしている。パトカー、スポット照明装置、現場検証中の連中、そして通りを隔てた歩道にはやじうまの群れ。ぼくらが歩いてきた側の歩道の延長線上はロープで仕切られている。近づいていくと、ひとりの警官がゆくてを遮り命令しやがった。「あっち側の歩道へ渡って。渡ったら立ち止まらないように」
 「ここを見にきたんだがね」ウルフが警官に言った。
 「わかってるよ。あんただけじゃない。ほかに一万人もいるんだ。ほら、道の向こうへ行って」
 「殺された男の友人なんだよ。わたしはネロ・ウルフだ」
 「そうかい、そんならおれはマッカーサー将軍だ。さっさと行ってくれ」
 会話はおもしろい展開になりそうだった。ひとつの照明が照らし出したスポットの中に、馴染みの顔をみつけていなければ。ぼくは叫んだ。「ロウクリッフ!」
 ロウクリッフは振り向くと目をこらし、どぎつい光の外へ出ると、また目をこらし、そのあとで近づいてきた。「なんの用だ?」彼が尋ねた。
 ウルフとぼくが今まで出くわした数ある殺人課の面々の中でも、その地位の高い低いにかかわらず、完全に気持ちが通いあっていると確信できるただひとりの男、それがロウクリッフ警部補だ。彼に会いたいなあと思ってるちょうどその場所で、彼もまたぼくに会いたがるんだから。ぼくはロウクリッフを呼び寄せると、あとはウルフにまかせた。
 「こんばんは、ロウクリッフ警部補。クレーマー警部はこちらですか?」
 「いいえ」
 「ステビンズ巡査部長は?」
 「おりません」
 「ヴクチッチが死んだ現場を見たいんですが」
 「邪魔されちゃあ困るんですよ。こちとら仕事中でしてね」
 「わたしもですよ」
 ロウクリッフとしても考えたのだ。本当は二、三人の部下に、ぼくたちを川に連れて行って投げ込むよう命令したかったにちがいない。だがタイミングが悪かった。ウルフがおきまりの仕事のために家の外へ出るというのは前代未聞のことだったので、ロウクリッフも、これはただごとではない、と察していた。個人的な好みを押し通したら、上司がどんな反応をするかだって目にみえている。それにもちろん、彼だってウルフとヴクチッチが親しかったことくらい知っているのだ。
 不本意だっただろうが、「こっちへどうぞ」と言うと、ロウクリッフは家の前の歩道の縁まで連れて行ってくれた。「訂正の余地はありますが、ほぼ当たっていると思われることをお話しします。ヴクチッチはこの建物をひとりで出てきて、駐車していた二台の車の間を通り、タクシーを捜して西方向を見ました。すると、そこから二十ヤード西に二重駐車していた車――タクシーじゃなくて黒か紺のフォードのセダンです――が発進。そのまま前進して、ヴクチッチとほぼ並んだ時、車に乗っていたやつが発砲を始めました。発砲したのが運転していた人間か、それとも同乗者だったのかはまだ分かっていません。ちゃんと目撃してた人間がまだみつかっていないんでね。ヴクチッチが倒れたのはそこです」ロウクリッフが指差した。「即死でした。分かっているのは、そこまでです。今のところ、建物からは何も検出されていません。ヴクチッチは最上階にひとり暮らしで、外出した時も他に誰かいた形跡はありませんね。食事は、もちろん自分のレストランでする習慣でした。他に何か聞きたいことは?」
 「いいえ、ありがとう」
 「歩道の縁から降りないでくださいよ。昼間また車道を調べますから」そう言い残すとロウクリッフは行ってしまった。
 ウルフはマルコが倒れた現場を見下ろして、しばらく立ち尽くしていたが、顔をあげるとあたりをさっと見回した。移動中の照明が顔にあたり、目をしばたたかせている。ぼくの知るかぎり、ウルフがじきじきに事件現場に足を運んで殺人調査を開始するのは――ぼくの命を救うとかいう、違った種類の衝動に突き動かされた場合を除けば――これが初めてことなので、ウルフがこれからどんなふうにするのか好奇心をそそられた。彼にとっては、めったにない冒険なのだ。
 ウルフは、ぼくのほうを向き、「レストランはどっちの方角だ?」と尋ねることで、その冒険に飛び込んだ。
 ぼくは西へ首を傾けた。「レキシントン街を四ブロック行った角です。タクシーを拾いましょう――」
 「いや、歩く」彼は歩きはじめた。
 前進するにつれ、ぼくは、ますますはっきりと思い知らされた。いちばん古く親しかった友人の死は、ウルフに相当ひどい衝撃を与えたのだ。ぼくらはこれから交差点を五つも渡らなきゃならない。その角という角すべてに、飛び出そうと身構える車輪つきの怪物が彼を待ち受けている。それでもなお、ウルフは大股で歩き続けた。まるでそれが、彼にとってごく自然で、普段どおりのやり方であるかのように。