いまや古典の域に達したレックス・スタウトの探偵小説は、日本では1960年代に数多く翻訳出版されました。
 本書の主人公のネロ・ウルフは、蘭と美食とビールをこよなく愛する巨漢で、外出するのが大嫌い。女嫌いも筋金入り。事件解決には、高額な報酬を要求し、ニューヨークの自宅には助手のアーチー・グッドウィン、お抱え料理人のフリッツ・ブレーナーを住み込ませ、蘭栽培専門家のシオドア・ホルストマンを通わせて、男ばかりの(だからといって男好きではない)優雅な生活を送っています。
 ドアの外へ一歩たりとも出ずに、アーチーの報告をもとに、推理を働かせて難事件を解決するのが常のウルフ。どんなに金を積まれても動かないのが彼の信条です。ところが、この『ザ・ブラック・マウンテン』では、親友の死が彼の巨体を動かしたのです。飛行機を乗り継ぎヨーロッパへ。異国の地で、7分の1トンの体重に耐えきれなくなった両足をひきずりながら、ウルフは似つかわしくない冒険を繰り広げます。もちろん、助手のアーチーを引き連れて。


 この本の原作は1954年、アメリカで出版されました。ソビエトと冷戦下にあり、マッカーシーの赤狩りが激しかった時代、「物言えば、唇寒し」といった風潮のなかで、作者スタウトはウルフを通して、ソビエトの政策だけでなく、アメリカの政策をも皮肉っています。
 アーチーの茶目っ気ある語りが冴えるこの本は、本国での初版出版年と、日本で未訳である点から、翻訳権の対象からはずれるため、当社「しゅえっと」で日本語訳を出版することにいたしました。
『ザ・ブラック・マウンテン』は、A5変形版、全16章、358ページの本ですが、このホームページでは最初の4章の全文を掲載しました。ご一読後、気に入られた場合は電子メールにて下記アドレスまでご注文いただければ幸いです。

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